フリーゲージ列車やっと実現

長崎新幹線武雄温泉-諫早の着工が、政府・与党の作業部会で認められました。(他に認められたのは北海道・東北新幹線の新青森-新函館、北陸新幹線の富山-金沢。)
長崎新幹線は並行在来線の経営分離でまだ問題をはらんでいますのでちょっと心配ですが、長崎新幹線でいいことだ、と思うのは、フリーゲージトレインを採用することです。
フリーゲージトレインは、線路の幅にあわせて車輪の間隔を伸び縮みさせることのできる列車です。
日本のJRの在来線は線路の幅が1067mm(狭軌)、これに対して新幹線は国際的な標準である1435mm(標準軌)です。フリーゲージトレインがあれば、途中まで新幹線、途中から在来線を走ることができます。
長崎新幹線では、輸送の主力である博多-長崎を結ぶのに、博多-武雄温泉間と、諫早-長崎間は狭軌の在来線を利用する必要があるため、フリーゲージトレインの導入が必要になったのでしょう。
(もしかしたら、博多-新鳥栖間は標準軌の九州新幹線を通るのかも。よく分かりませんが。)

ところで、明治以来鉄道は政治の道具となり、政治家が自分の選挙区に利益誘導する手段の一つでした。「我田引鉄」という言葉もよく使われていますよね。
東海道新幹線誕生時も、新幹線が利益誘導に使えると気づいたある政治家が、線路をねじ曲げてさびしい場所に駅を作り、駅前に自分の銅像を建てさせるという愚行をしました。
上越新幹線でも同様に、今まで名前を聞いたことのなかったような町に新幹線の駅ができ、地元でない国民は驚いたものです。

一方、山形、秋田の両新幹線では、東京への直通を図るために、福島-新庄間、盛岡-秋田間の在来線の軌道幅を広げて標準軌に直しました(一部に狭軌が並行で残る)。工事は数年に及ぶ運休を伴いました。また、狭軌の在来線ネットワークが分断されることになり、他の線区が不通になった場合などに在来線の列車を迂回させることができなくなりました。

ところが、フリーゲージトレインが実用化されると、既存の新幹線がある区間はそこを走り、その先は在来線に下りて走ることができるようになるのです。在来線は、山形・秋田新幹線のように軌間を広げる必要はありません。
四国や山陰は現在では新幹線計画がないためか、フリーゲージトレインの実験走行に協力的です。

極端な言い方ながら、新しく別線の建設をしなくても、全国各地に新幹線乗り入れの直通列車が走る可能性があるのです。
東京発鹿児島行だって、現在建設中の博多-新八代間の新幹線ができていなくても直通できます(博多で在来線に下り、新八代で再び九州新幹線に乗る)。
東京・新大阪発四国松山行も利用者が見込めそうですね。
東京・新大阪発山陰松江行も同様です。
ディーゼル車の開発がどうなっているかは知らないのですが、もしかしたら東京発札幌行きも実現できるかも(電車が走れない区間があります)。架線があればそこから電気を取り、ない区間では燃料電池を使う電車というのも実現性がありそうですね。

政治家は新幹線誕生以来、「自分の選挙区だけ」に新幹線が通ることを望んでいました。それは、自分の地元の住民が他の地域に比べて便利になるというだけでなく、数百億円以上が動く新幹線という巨大建設プロジェクトを地元にもたらすことができるからです。
そのため、「全国どこでも走ることができる」フリーゲージトレインを嫌っていたと聞いたことがあります。また、フリーゲージトレインの予算がかなり低く抑えられていたとも。
仮にフリーゲージトレインが実現しても、自分の地元「だけ」が便利になるわけではなく、また、必ずしも数百億円オーダーの新幹線軌道を自分の選挙区に作らなくてもよいわけですからね。
数種類の軌道が入り乱れるヨーロッパでは、列車の車輪の幅を変える技術はかなり昔に実現していましたから、日本で予算をつけてきちんと研究を重ねていれば、新幹線軌道を270Kmといった高速で走る車両の開発はもっと早く実現していたかも知れません。

ま、政治のことは置いておいて、一旅行者の私としては、東京から生まれ故郷の四国に帰るのに新幹線直通列車が使えるのがうれしいと思います。
乗換えとなる岡山駅では、連絡船のあった昔から四国住民が通路を走るので有名です(笑)。四国走りと言われているそうです。今も昔も、私は走ってしまいますね。この乗継がなくなると、四国住民はうれしでしょうね。
また、全国各地へ向かって東京、新大阪などからの直通列車が設定されるでしょうから、どこへ行くにも便利になりそうですね。

長崎新幹線をきっかけにして実用化するフリーゲージトレインに期待したいと思います。